コンテンツ業界とプラットフォーム戦略
川上量生さん(ドワンゴ代表取締役会長)のお話をうかがう機会があったので、そのメモ。
映画、音楽、新聞、雑誌などコンテンツ提供側が、一般のインターネットユーザー、およびGoogle、Yahoo!、Amazon、Appleといったインターネットに強い企業と対等な関係を構築して行くにはどうしたらいいか、結論として「サーバー型コンテンツの提供=クラウド化が必須」というお話です。
クラウド化のポイント
・コンテンツ業界の取るべき販売方法
・顧客情報をどう管理するか
講演タイトル
「コンテンツ業界の対プラットフォーム戦略」
なぜネットでお金を払わないか
・お金を払っても得をしない、逆に損をするから
同じサービスを無料で利用する人がいると有料ユーザーが損をする
・所有欲が満たされない
データは現実的な形が無い
ファンにとって、パッケージなどを手に取り、並べることにも価値がある
・正規品の方が不便
DRMなど著作権保護の施策がユーザーにとって不便
違法コピーの方がコンテンツが豊富
機器の乗り換えの際、もう一度購入しなければならない
「嫌儲(けんもう)」意識と「情報弱者」思想
・ネットで儲けることが悪であるという認識
・ネットでは無料サービスが豊富だが、それを知らずにいる人を馬鹿にする風潮
→ネットユーザーの課金対する意識を変える必要がある。
デジタルで所有欲を満たすには
・コピーできないコンテンツフォーマットで販売する
これまではデータ=コンテンツとして販売
↓
サーバー型コンテンツ(サーバー利用権)として販売する
サーバー型のコンテンツフォーマット
・データーはサーバー上におき、ユーザーは利用権によりデータを自由に使える。
データはコピーできるが、利用権はコピーできない。
ユーザーはどんなデバイスからでも同じサービスを受けられる
データをコピーするより「便利」なサービスを提供する
例
MMO RPG(FFXI、World of Warcraftなど)
アバター(モバゲー、ハンゲー、アメーバ)
月額課金、アイテム課金で支払う
iCloud(Apple)
・コーピー天国といわれる中国、韓国でもMMO RPGでは正規料金を支払っている。
デジタルコンテンツでユーザーの所有欲を満たすには
・コンテンツはサーバーにおく
・サーバーで管理するのはデータではなく顧客の購入情報
→コンテンツのクラウド化
現在、外資のプラットフォームでサーバ型コンテンツが進んでいる
このままでは
・価格決定権を失う
・収入配分が低くなる(7割まで失うことになるだろう)
バックマージンに加え、プラットフォームへの掲載費、広告費などいろいろな手段で搾取される。
・ユーザーへのマーケティング手段を失う
コンテンツフォルダーがプラットフォーマートとは別に消費者との接点をもつ
ユーザーが、どこでコンテンツを買っても、何度でも、どのフォーマットでも利用できるサービスを提供する。ユーザーを不便にさせず、もっと便利に。
→所有欲&購入意欲が増す。
顧客情報の管理
・アフターサポート
おまけコンテンツの提供
バージョンアップ版の提供
続編の提供
さまざまなプラットフォームでの利用権
・権利管理サーバーの構築とパッケージへのシリアル番号の添付
・サードパーティへ権利管理サーバーへのアクセスの提供とアフターサポート
ユーザーに対して、どれだけ多くの利用シーンを提供できるかで価値が決まる。
・ユーザーの集まる場所を作る
ニコ動
DVD、CDの購入者がニコ動でも視聴できる。
パッケージ型コンテンツからライブ型コンテンツへ、進化するコンテンツの体験を売るべき
ユーザーの反応もコンテンツの価値に取り込む。口コミする権利
ニコ動
・誰でも動画配信できるようになったが質が悪い
ちょっとチカラを入れたら質のいい放送が提供できると思った
→ターゲット、競合をどこにするかで戦略が決まる
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いきなりコンテンツ提供側がサーバー管理や顧客管理をするのは難しいが、進めていかないと全部外資のネット企業にもっていかれちゃう。これからはサーバー系の知識も必要になるかも。